復旧・復興の詩

神戸のルミナリエ
神戸のルミナリエ

◇阪神震災二十年

◇高台移転

嵐山花灯路

◇東北傷深



阪神震災二十年

裂地激震年月移 ()()激震(げきしん) 年月(ねんげつ)(うつ)

復興艱難少人知 復興(ふっこう)艱難(かんなん) (ひと)()ること(まれ)なり

欲懐往時巷間立 往時(おうじ)(おも)わんと(ほっ)巷間(こうかん)()てば

今日無痕多所思 今日(こんにち)(あと)()所思(しょし)のみ(おお)

(註一) 艱難=なんぎ

(註二)  巷間=町の中、市中

             平成二十七年八月  光琇

 


 平成7年1月17日の早朝、阪神・淡路地域を大変な地震が襲ったことを知りました。阪神高速道路の倒壊と火災の状況は衝撃的でした。当日は電車が止まっていたので自宅で待機しましたが、翌日から出社し支援物資の搬送などを行いました。

 週末に西宮市役所に行って驚きました。仮庁舎のひどい職場環境の中で、すでに顔見知りの職員が復旧の仕事をしていたのです。自宅が倒壊しているのに公務を優先しているのです。月末に北回りで鉄道を乗り継いで兵庫県庁に行くと、そこでも同じような状況でした。私も微力ながら県・市の復旧・復興業務に関与しましたが、地元行政の不眠不休の尽力は大変なものでした。街中に立つと、今は何事もなかったかのようですが、当時のことがあれこれ頭をよぎります。



高台移転

 東日本大震災の発生からもうすぐ4年です。被災地では、復旧・復興事業の一環として、移転のための高台整備が進められています。高台居住は津波に対して安全・安心ですが、合意形成と造成のために時間がかかります。時間がかかり過ぎると、住民が移転先に定着してしまうため、事業は急ピッチで進められています。

 水産関係者は海岸近くに居住することになるため防潮堤も必要ですが、海が見えないほど高い堤防は閉塞感があります。そのため、まずは低い防潮堤で津波を防ぎ、越波した場合は海岸線と並行した高速道路の盛り土で防ぎ、時間を稼いでいる間に避難するというように、多段階の対策による「減災」という概念が重要です。

苛殃國破礫成堆 苛殃(かえい)(くに)(やぶ)(れき) (たい)()

四散窮民安在哉 四散(しさん)窮民(きゅうみん) (いずく)()りや

郷里待君何日返 郷里(きょうり)(きみ)(いず)れの()にか(かえ)るを()たん

丞丞再建向高臺 (じょう)々たり再建(さいけん) 高台(たかだい)()かう

  (註一) 苛殃=ひどい災難

(註二) 丞々=進みはかどるさま

    平成二十七年二月  光琇



嵐山花灯路

嵐山豪雨已痕消 嵐山(らんざん)豪雨(ごうう) (すで)(あと)()

燈影幽玄渡月橋 灯影(とうえい)幽玄(ゆうげん)なり ()(げつ)(きょう)

江水紅粧遙夜興 (こう)(すい)紅粧(こうしょう)(よう)()(きょう)

落楓竹葉得風飄 (らく)(ふう) 竹葉(ちくよう) (かぜ)()(ひるがえ)

 中国語で朗詠

        平成二十五年十二月  光琇

 京都の嵐山花灯路は、京都・花灯路推進協議会の主催で、2005年から毎年12月の中旬に、京都の嵯峨・嵐山地区周辺で行われる観光イベントです。2500基の行灯による花の路やいけばな、渡月橋のライトアップなどが繰り広げられ、今ではすっかり京都の冬の夜の風物詩になりました。

20139月に、台風18号の襲来により桂川が氾濫しました。その復旧工事は急ピッチで進み、何とかこの年も花灯路を開催することが出来ました。1214日から23日までの10日間の開催で、私は最終日に行きました。夜の寒さにもかかわらず人がいっぱいで、数々の演出に皆さん酔いしれている様子でした。特にライトアップされた渡月橋(写真)は幻想的な雰囲気を醸し出し、復旧を象徴しているように思えました。



東北傷深

 阪神淡路大震災の時は、大阪の会社から近いこともあってすぐに現場に駆けつけることができたのですが、東日本大震災の時はなかなか現場に行くことができず、やっと7月に石巻市と女川町に行くことが出来ました。その時に見た傷跡は衝撃的でした。年末には東北支社を開設して社員を送り込み、復旧・復興に当たることにしました。

 結句(第4句)の「衆志成城」というのは、毛沢東がよく唱えた四字熟語で、四川地震からの復旧・復興の合言葉にもなりました。初出は春秋時代の「国語」であるといわれています。

 この漢詩を翌年の年賀状に入れたところ、中学の時の女性の恩師から、「出版予定のエッセー集に入れたい」という突然の電話があり、何か月か後に、水彩画入りの美しい本が送られてきました。お礼にお伺いしたいとの電話をしたのですが、そのすぐ後に先生は残念ながら亡くなられ、結局お会いすることができませんでした。

 

雲影風来臨海低 (うん)(えい)(ふう)(らい) (うみ)(のぞ)みて()

波平舞爪痕凄 波平(なみたい)らかにして(かもめ)()うも 爪痕(そうこん)(すさま)

仰天憂憤無情理 (てん)(あお)ぎて憂憤(ゆうふん) (じょう)()()きを

衆志成城再築堤 (しゅう)()(せい)(じょう) (ふたた)(つつみ)(きず)かん

(註一) 仰天=激しく嘆くときなどの所作 

(註二) 情理=人情と道理

   (註三) 衆志成城=一致団結すればどんな困難も克服できるたとえ(中国春秋時代の歴史書「国語」より)

               平成二十三年八月  光琇