家族・友人の詩

黒部峡谷
黒部峡谷

◇有朋集川床

◇交友

◇新年初碁会

◇迎中国客人

探 春(朗詠)

◇賀初孫三歳

◇故人久集酌酒



有朋集川床ー朋有り川床に集うー

風涼鴨水坐清漣 (かぜ)(すず)(おう)(すい) (せい)(れん)()

故旧相逢樽酒前 故旧(こきゅう)(あい)()(そん)(しゅ)(まえ)

六六山峰明月宴 六六(ろくろく)(さん)(ぽう) 明月(めいげつ)(えん)

高談痛飲楽余年 (こうだん) 痛飲(つういん)()(ねん)(たの)しまん

(註一) 清漣=すんだ水の表面のさざ波

(註二) 故旧=以前からの知り合い

(註三) 六六山峰=東山三十六峰をさす

  平成二十九年六月  光琇 

京都の夏の風物詩「川床」では、5月1日から9月30日の間、鴨川の右岸(西岸)の川の上に納涼床が張り出されます。二条から五条の間に90余りの床が並び、懐石、割烹、京料理などの和食だけでなく、中華料理や西洋料理も楽しめます。その発祥は江戸時代にまでさかのぼり、富裕商人が見物席を設けたのが始まりだそうです。昭和27年には「納涼床許可基準」が制定され、京都鴨川納涼床協同組合が川床の適正な管理を行っています。

毎年夏に、この川床で業界の役員OBで懇親会を行っています。初回は宴会を始めたとたんに小雨が降りだし、店内に引っ越しました。しかし翌年からは川床の雰囲気を楽しみながら昔話に花を咲かせています。



交友

 1年に1回、会社のOBと現役幹部との懇親会があります。最近までは会社の小部屋でOBだけ集まって缶ビールでこじんまりと行っていました。私が現役として初めてそこをのぞいた時に、これではいけないと思って、翌年から現役の幹部も参加するようにして、場所も広い宴会場に変え、その後ホテルで行うようになりました。それからは遠方のOBも参加してくれるようになり、参加人数も増えていきました。

 今年は会社創立70年となりますが、これまで経営が傾いたことがありません。以前は、そんなことは当たり前と思っていたのですが、最近の大企業の不祥事や経営破綻のニュースを聞くと、当たり前のことが実はOBの皆さんの大変な努力の積み重ねであったという思いを深くします。

  今回は私の現役最後の懇親会参加となり、次回からはOBとしての参加となります。

 

旧朋久闊会江隈 (きゅう)(ほう) 久闊(きゅうかつ) (こう)(わい)(かい)

往事茫然如夢回 往事(おうじ)茫然(ぼうぜん) (ゆめ)(ごと)(めぐ)

霜鬢相知人易老 (そう)(びん) (あい)()(ひと)()(やす)きを

得時何日再傾杯 (とき)()(いず)れの()にか(ふたた)(はい)

         を(かたむ)けん

(註一) 久闊=長い間会わないこと

(註二) 江隈=川べりの奥まったところ

(註三) 霜鬢=白い鬢毛

               平成二十八年六月  光琇



新年初碁会

春情満溢玉房邊 (しゅん)(じょう)(まん)(いつ) 玉房(ぎょくぼう)(へん)

対坐囲棋久故縁 対座(たいざ)して()(かこ)(きゅう)()(えん)

烏鷺交爭盤上乱 烏鷺(うろ)交争(こうそう)盤上(ばんじょう)(みだ)

輸贏相頌酒樽前 輸贏(ゆえい)(あい)(たた)酒樽(しゅそん)(まえ)

(註一) 久故=ふるなじみ 

(註二) 烏鷺=黒石と白石のたとえ

(註三)  輸贏=敗者と勝者

平成二十六年一月  光琇


 自宅の近くに囲碁クラブがあり、毎週日曜日に集まり、1月には初碁会をやります。集まるのはなぜか老人ばかりです。何年か前に「ヒカルの碁」という漫画が出版され、子供たちの間で囲碁人気が高まってからは、年齢構成は瓢箪型になったようです。

 囲碁は相手の石を取ったり脅かしたりしながら自分の陣地を広げ、その広さを競うゲームです。戦術・戦略が国取りの駆け引きに通じるところから、信長、秀吉、家康などの戦国武将にも好まれたようです。

 戦いにおいては、自分の足元を固めてから攻めに転じないと、攻めている自分の石が逆に攻め取られてしまいます。私は、「相手の弱点が見えるが自分の弱点は見えない」という性格のため、いつも守りを欠いたまま攻めて負けてしまいます。



迎中国客人ー中国の客人を迎うー

禹域佳人渡海来 ()(いき)()(じん) (うみ)(わた)りて(きた)

相逢解帯笑顔開 (あい)()いて解帯(かいたい)笑顔(しょうがん)(ひら)

高談不到侵暁 高談(こうだん)()きず (しん)(ぎょう)(いた)るも

対坐交情濁酒杯 対坐(たいざ)して(じょう)(かわ)さん 濁酒(だくしゅ)(はい)

 (註一) 禹域=中国 (註二) 佳人=よい友人 

(註三)解帯=くつろぐこと(註四) 侵暁=明け方

                    平成二十五年八月  光琇


 7月末に中国の関係会社の人たちが訪日したので、歓迎の漢詩を作って披露しました。ところがその後、「その詩をその会社の広報誌に載せるので送れ」という連絡があり、送ったところ、実際に翌年の2月号に掲載されました。送られてきた広報誌をみて驚きました。なぜなら、私の漢詩がトップで、その後にそこの社員の漢詩が続くという構成になっていたからです。お礼のメールの中で、「漢詩の本場である中国では、私の詩は広報誌を汚すことになったのではないか」と書いたところ、すぐに「君は謙遜が過ぎる」という返信がありました。

 中国の社員の漢詩をみると、字数や押韻の制約にこだわらず、自由な詩体で作成されている詩も多くありました。ひょっとすると、私の漢詩は唐の時代に確立された近体詩のルールをきっちり守っていたので格式が高そうに見えたのかもしれません。


探 春

 2月には梅の花が春の訪れを告げます。3月の半ばを過ぎて寒さが和らぎ桜の開花が待ち遠しくなると、いよいよ本格的に春がやってきます。4月には、桜につられて戸外に出る人が急に多くなります。日本には四季があり、季節ごとに自然が彩りを添えてくれます。最近は春と秋が昔より短くなったような気がしますが、それでも四季は必ずめぐります。 

 この詩は、暇な連中が集まって桜の木の下で一杯やろう、ということになった時のものです。まだちょっと空気がヒンヤリとしていますが、飲んでいるうちに温まってきます。そのうちに多くのグループが宴会を始め、だんだんと賑やかになります。高吟とは、声高らかに漢詩などを吟ずることです。わがグループには詩吟をやる人もいたので、盛り上がってくると出るかなと思ったのですが、それはありませんでした。

驟暖陽光芳草萌 (しゅう)(だん)陽光(ようこう)(ほう)(そう)()

東風丘上訪山櫻 東風(とうふう)(きゅう)(じょう)山桜(さんおう)(たず)

有朋相集花枝下 (とも)()相集(あいつど)()()(もと)

誰厭高吟重酒 (たれ)(いと)わん 高吟(こうぎん)(しゅ)(こう)(かさ)ぬるを

 中国語で朗詠

 (註一) 芳草=萌えるばかりの香るような若草

(註二)  =つのさかずき 

                            平成二十四年四月  光琇



賀初孫三歳ー初孫の三歳を賀すー

弄瓦三年生日回 (ろう)()(さん)(ねん) (せい)(じつ)(めぐ)

容姿如媛可憐哉 (よう)姿()(ひめ)(ごと)()(れん)なる(かな)

諳書好問談諧滑 (しょ)(そら)んじ()(この) (だん)(かい)(なめ)

        らかなり

顔色怡怡掌上開 顔色(がんしょく)怡怡(いい)として (しょう)(じょう)(ひら)

  (註一)     弄瓦=女の子が生まれること  

 (註二)  談諧=楽しそうに話すこと

  (註三) 怡怡=やわらぎ喜ぶ 

  (註四) 掌上に開く=掌中の珠より(自分にとって最

        大切なもの、子供・妻などのたとえ)

           平成二十三年十二月 光琇

 初孫は女の子です。たった一人の孫です。中国語では、息子の息子を「孫子」、息子の娘を「孫女」、娘の息子を「外孫子」、娘の娘を「外孫女」というように使い分けています。この孫は娘の娘なので、中国流でいえば「外孫女」ということになりますが、そんなややこしいことは無視して、単に「初孫」としました。それはさておき、孫は海外で生まれたのでなかなか会えなかったのですが、生後半年で日本に帰ってきてくれました。三歳はかわいい盛りです。

  本を読んでもらうのが好きですが、読みだすとやめさせてくれないのが難点です。公園の砂遊びでも同じです。何かを一緒にやりだすとやめさせてくれません。学校に行くようになると、友達のほうがいいということで「じじ離れ」するでしょうから、なついてくれている間は、やめさせてくれないことぐらいは我慢すべきでしょう。子育ての時に比べると時間的余裕があるので。



故人久集酌酒ー故人久しく集いて酒を酌むー

 大学時代の研究室の友人とJRの駅でバッタリ会って、久しぶりに関西在住の研究室卒業生を集めて飲んで騒ごうという話になりました。早速幹事を引き受け、ご指導いただいた先生や卒業生に声をかけて新大阪のホテルに集まってもらいました。私は、卒業して40年もたっているので、いつのまにか最年長組に属していました。そのため、後輩たちに多少カッコをつけなければいけないので、最近漢詩作りを始めたということで、処女作である「天城路」を披露しました。

 久しぶりとはいっても、普段仕事の関係で会っている人たちもいます。仕事で会う時には、皆さん地位や立場があるので、打ち解けてざっくばらんに話すというわけにはいきません。この詩の転句(第三句)では、今夜は「冠帯(冠をかむり帯をきちんと結んだ礼装)を解いて、ざっくばらんに話そうよ」と呼びかけ、結句(第四句)では、皆腹いっぱい酒を飲んだので、「1斗の酒ももうなくなりそうだ」と、大げさに結んでみました。

 

修學離京四十年 (しゅう)(がく) (きょう)(はな)るること()(じゅう)(ねん)

重逢良夜醉陶然 (かさ)ねて(りょう)()()()うて陶然(とうぜん)たり

勸君則可解冠帶 (きみ)(すす)(すなわ)冠帯(かんたい)()くべけんや

斗酒欲聖與賢  斗酒(としゅ)()きん(ほっ)(せい)(けん)

 (註一) 故人=古い友達 

 (註二) 陶然=酒に気持ちよく酔うさま  

(註三)聖賢=(清酒を聖人、濁酒を賢人というところから)

              清酒と濁酒

                    平成二十三年十月 光琇